食材マップ:世界の味覚

【食材マップ】世界のビーツ料理:鮮やかな彩りの根菜

Tags: ビーツ, 野菜, 根菜, 世界の料理, 多様な調理法

ビーツは、鮮やかな赤紫色が特徴的な根菜です。カブのような形をしていますが、ほうれん草と同じアカザ科の植物で、葉も食べることができます。土っぽい独特の風味と自然な甘みがあり、茹でたり焼いたりするとさらに甘みが引き立ちます。ビタミンやミネラル、食物繊維も豊富に含まれており、栄養価が高い食材として世界各地で利用されています。その美しい色は天然の色素によるもので、料理に彩りを加えることができるのも魅力の一つです。世界には、このビーツを使った様々な料理が存在します。

ロシア・ウクライナなど東欧:ボルシチ

ボルシチは、ビーツを主役にした、東ヨーロッパを代表する煮込みスープです。ロシアやウクライナなどで広く家庭で作られています。牛肉や豚肉、キャベツ、じゃがいも、にんじん、玉ねぎなど様々な野菜と一緒にじっくり煮込むことで、ビーツの鮮やかな赤紫色がスープ全体に移り、美しい色合いになります。ビーツの自然な甘みと野菜の旨味が溶け合った、滋味深い味わいが特徴です。サワークリームを添えて食べることが多く、そのまろやかな酸味がボルシチの味を引き締めます。寒い季節には体を芯から温めてくれる一品です。

中東・北アフリカ:ビーツのフムス

フムスはひよこ豆のペーストですが、そこに茹でたビーツを加えて作る「ビーツのフムス」は、中東や北アフリカを中心に広まっています。ひよこ豆のクリーム状の食感に、ビーツのほくほく感と甘みが加わります。何よりも特徴的なのは、鮮やかなピンク色に仕上がることです。タヒーニ(ごまのペースト)やレモン汁、ニンニクなどと一緒にミキサーで滑らかにすることで、ディップやスプレッドとしてパンや野菜スティックに添えたり、サンドイッチの具材にしたりと様々な方法で楽しめます。見た目も華やかなので、食卓を彩るアクセントにもなります。

イギリスなどヨーロッパ:ビーツのピクルス

ビーツは酢漬けにされることも多く、特にイギリスなどヨーロッパの一部地域では、茹でたビーツをスライスまたは一口大にカットし、甘酢に漬け込んだピクルスが一般的です。甘酢には、砂糖、酢、水、そしてクローブやオールスパイスなどのスパイスが使われることがあります。このピクルスは保存がきき、メイン料理の付け合わせやサラダの彩りとして重宝されます。甘酸っぱい味と、ビーツ特有のシャキシャキとした食感が楽しめます。そのまま食べるのはもちろん、刻んでポテトサラダなどに混ぜ込むこともあります。

インド南部:ビーツのポリヤル

インド南部では、ビーツをスパイスと一緒に炒めた「ポリヤル」という家庭料理があります。茹でるか蒸したビーツを小さく切り、マスタードシードやクミンシード、レンズ豆、カレーリーフなどのスパイスと共に油で炒めます。仕上げにすりおろしたココナッツを加えるのが特徴です。ビーツのほくほくとした食感と甘みに、スパイスの香ばしさやココナッツの風味が加わり、複雑な味わいになります。ポリヤルはご飯やチャパティと共に食べられるおかずの一品です。ビーツの鮮やかな色が、南インド料理の食卓に彩りを添えます。

ビーツは、その鮮やかな色と独特の甘み、そして栄養価の高さから、世界の様々な地域で多様な方法で利用されています。煮込み料理の主役になったり、ペーストに混ぜ込まれたり、保存食として酢漬けにされたり、スパイスと炒められたりと、その変幻自在な姿は、世界の食文化の豊かさを教えてくれます。