食材マップ:世界の味覚

【食材マップ】世界のナス料理:変幻自在の夏野菜

Tags: ナス, 世界の料理, 夏野菜, 野菜, 多国籍料理

ナスは日本でもお馴染みの野菜ですが、世界各地でも広く栽培され、様々な形で食されています。日本の細長いナスだけでなく、丸いもの、卵形のもの、紫や白、緑色のものまで、その種類は豊富です。ナスは油との相性が良く、加熱するとトロリとした食感になるのが特徴です。アク抜きをして使うことで、様々な料理に活用できます。ここでは、世界各地でナスがどのように調理されているかをご紹介します。

イタリア:カポナータ

イタリア南部、特にシチリア島やナポリで親しまれている野菜の煮込み料理です。ナスをメインに、パプリカ、ズッキーニ、玉ねぎ、セロリなどの夏野菜をオリーブオイルで炒め、トマトソースで煮込みます。さらに、ケッパーやオリーブ、酢や砂糖を加えて、甘みと酸味のバランスが良い奥深い味わいに仕上げます。ナスは一度揚げたり、塩もみしてから炒めたりすることで、余分な水分が抜けて旨味が凝縮され、煮崩れしにくくなります。前菜としてそのまま食べたり、パンに乗せたり、パスタソースにしたりと多様な楽しみ方ができます。

ギリシャ・中東:ムサカ

ギリシャをはじめ、トルコや中東地域で食べられている、ナスを使った重ね焼き料理です。スライスしたナスと、ラム肉や牛肉を使ったミートソース、ベシャメルソースを交互に重ねてオーブンで焼き上げます。ナスは揚げたり焼いたりして火を通してから使います。ミートソースのコク、ベシャメルソースのクリーミーさ、そしてトロトロになったナスの食感が一体となり、満足感のある一品です。地域によっては、ナスだけでなくジャガイモやズッキーニも使われます。

インド:ベイガン・バルタ

主に北インドで食べられる、焼きナスを使ったペースト状の料理です。「ベイガン」はヒンディー語でナス、「バルタ」は潰すという意味です。ナスを丸ごと直火で焼いたり、オーブンで焼いたりして皮を焦がし、中の柔らかい果肉を取り出します。これを細かく刻むか潰し、玉ねぎ、トマト、ショウガ、ニンニクなどの香味野菜と様々なスパイスと一緒に炒め合わせます。焼きナス特有のスモーキーな香りが特徴で、ホクホクとした食感とスパイスの風味が食欲をそそります。ロティやナン、ご飯と一緒に食べることが多いです。

中国:魚香茄子(ユーシャンチェーズー)

中国の四川料理や湖南料理でよく見られる、ナスの炒め物です。「魚香」とは魚の香りという意味ですが、魚は使われず、唐辛子、豆板醤、ニンニク、ショウガ、ネギ、酢、砂糖、醤油などで作る甘酢辛い味付けの調味料を指します。ナスは素揚げしてから使うことが多く、外はカリッと、中はトロリとした食感になります。この素揚げしたナスとひき肉(豚肉が多い)、そして魚香ソースを強火で手早く炒め合わせます。ご飯が進む、パンチの効いた味わいが特徴です。

ナスは、煮る、焼く、揚げる、炒める、蒸すなど、様々な調理法に適応できる柔軟性を持っています。その調理法や組み合わせる食材、味付けによって、全く異なる料理へと姿を変えます。今回ご紹介した料理はほんの一例であり、世界にはまだまだナスの多様な利用法が存在します。身近なナスから、世界の豊かな食文化を感じ取ることができるでしょう。